

空いた土地をコインパーキングとして利用して収益を得るコインパーキング経営は、経営リスクの低い事業として注目されています。ただし、どんな経営にも法律はついて回るもので、きちんと理解をして遵守をしなければなりません。どのような事業でも、関連する法律について知らないまま事業をおこなうのは、いざというときに損失を発生させてしまうリスクにつながります。
コインパーキング経営に非常に関連性が高い法律として、「道路交通法」があります。道路交通法を理解していなければ、コインパーキングの経営を円滑に進めることは難しいかもしれません。本記事では、コインパーキングと道路交通法の関係やコインパーキング内の事故に関する注意点について解説します。
目次
コインパーキング経営をおこなうのであれば、必ず理解しておきたいのが道路交通法です。法律などの必要な知識を備えることは安定経営を維持するだけでなく、リスクマネジメントとしても重要です。まずは、コインパーキングと道路交通法の関係について解説します。
道路交通法とは、道路における危険防止や交通の安全を図り、道路の交通に起因する障害を防止することを目的とした法律です。主に公道における交通について、道路交通法が適用されます。公道では、自動車や自転車、歩行者などが多く存在していますが、それぞれが自由に往来すると、交通事故の発生リスクが大幅に高まってしまいます。そのため、道路交通法によって公道を往来する人々の交通方法を規制し、交通事故リスクの低減を図っているのです。
道路交通法違反に当たる行為としては、以下の例が挙げられます。
道路交通法には点数制度が設けられており、違反を起こすたびに点数が蓄積される仕組みになっています。3年間に基準を上回る点数がたまると、運転免許証の停止処分や取消処分が課されます。
道路交通法は随時改正がおこなわれており、最近でも「特定自動運行の許可制度」や「特定小型原動機付自転車(電動キックボード等)の交通方法」など、時代のニーズにあわせて改正されています。
その中でもコインパーキングに関連性の高い改正としては、平成18年6月1日に施行された改正道路交通法です。この改正は、道路上の違法駐車の対策を強化するものとなっています。都市部を中心に違法駐車が増えたことにより、交通事故・交通渋滞などの問題が多発し、国としてもそれらの対策が非常に急務となる状況となっていました。このような状況を変えていくため、道路交通法を以下のように改正し、違法駐車への罰則の強化や取り締まりの強化をおこなうようにしました。
改正されるまでは、運転者が車両から離れていてすぐに運転することができない状態にある放置車両の取締りは、違反者をすぐに確認できないため、違反者の特定が困難となっていました。そのため、その後追跡調査をおこなって車両の使用者に連絡を行っても、「誰が運転していたか分からない」などの申し立てをして、違反者の特定が最終的にできないといったようなケースが多発していたのです。そのような背景から、車両の使用者に対して放置違反金の納付責任と違法駐車取り締まりの民間委託をおこない、違法駐車の抑止を図るようにしました。
平成18年6月1日に施行された改正道路交通法によって、違法駐車の取り締まりが強化されましたが、この取り締まりの強化によってコインパーキングの利用は増加傾向にあります。道路上の放置車両は交通事故・交通渋滞などの問題を引き起こすため、警察や民間委託の監視員はすぐに違反として取り締まりをおこないます。違反として取り締まられてしまうと、点数の蓄積・反則金の納付をおこなわなければいけなくなるため、運転手たちはリスクを避けるためにコインパーキングの利用をおこなうようになってきたのです。
コインパーキング経営は、街中で駐車をしたいドライバーたちのニーズに対応しており、さらには交通事故・交通渋滞を減らす一助となっているため、安全な街づくりに貢献している社会性の高いビジネスといえるでしょう。
コインパーキング内で事故を起こしてしまった場合、道路交通法に基づいて適切な対処をおこなわなければなりません。ただし、ケースによってコインパーキング利用者の対応やコインパーキング管理者の対応に変動があります。ここからはコインパーキング内の事故に関する注意点について解説します。
コインパーキング内で車同士が衝突事故を起こしたり、歩行者がはねられたりなど、コインパーキングの利用者同士の事故に関しては、原則管理者に責任はありません。そのため、事故を起こした利用者同士で話し合いをおこなって、解決を図るようになります。そのため、事故を起こした利用者から管理者側に事故の責任を問われても、原則対応はおこなわなくても問題ありません。
コインパーキング内の事故は、事故の当事者に警察へ連絡してもらうことが必須です。道路交通法は主に公道における交通について適用となるため、「コインパーキングは私有地だから警察へ届け出なくてもいいのでは?」と考える方もいらっしゃるかもしれませんが、「不特定多数のものが自由に行きかうことができる場所」は道路交通法が適用されるため、ほとんどの駐車場内で発生した事故は警察に届け出る義務があります。
少ないケースではありますが、コインパーキングが私有地と認められて、道路交通法による警察への通報義務がないケースも存在します。しかし、その場合でも道路交通法が適用されるかどうかは個人では判断できないことがほとんどなので、警察に対応してもらうのが良いでしょう。「私有地だから通報しなくていい」と個人で判断して、実際には道路交通法が適用されると、当事者は後々法律違反で処罰されてしまいます。必ず事故の当事者に、警察に連絡をしてもらうようにしましょう。
コインパーキング内の事故は原則管理者に責任はないですが、コインパーキングの設備に不具合があり、それが原因で事故が起きた場合などは管理者の責任になります。例えば、コインパーキングのポールが折れていて車に傷が付いたり、機械式立体駐車場のトラブルで車が傷ついたりなど、コインパーキング側の設備不具合によって損害が起きた場合は、管理者が被害者に対して損害を賠償する責任を負うことになります。
コインパーキング内に「当駐車場内での事故に関しては一切責任を負いません」といった内容の看板を設置していたとしても、事故の原因が駐車場の管理者にあるケースでは、管理者に責任が問われる可能性があるので注意しましょう。
コインパーキングの運営をおこなう際は、カメラの設置をしておくことをおすすめします。設置をしないといけない義務はないですが、防犯カメラでコインパーキング全体の動きを捉えておけば、トラブルが発生した時に役立ちます。コインパーキング内で当て逃げや車両へのいたずら行為があった場合でも、カメラ映像から事故状況の把握や犯人の特定を行うことが可能です。映像を証拠品として警察に提供すれば、警察の捜査も迅速におこなわれ、コインパーキング内で起きたトラブルを早急に解決できます。
近年では、防犯カメラの性能が著しく進歩し、高精細画像による人物・車種の特定やナンバープレートの読み取り、夜間でも問題なく撮影できるデイナイト機能など、安全対策に役立つ機能が搭載されています。利用者が安心して利用できるように、カメラの設置はおこなっておきましょう。
本記事では、コインパーキングと道路交通法の関係やコインパーキング内の事故に関する注意点について解説しました。事業をおこなう限り、関連する法律に関しては常に向き合う必要があり、法律を知らないまま事業をおこなうのは損失を発生させてしまうリスクにつながります。法令順守は事業経営の基本でもあるので、必要な知識を備えて安定経営を維持できるようにしましょう。