

近年、建物の必要ない土地活用としてコインパーキング経営が注目を集めています。初期費用が比較的安価で、経営リスクも低いため始めやすく人気になっていますが、経営をおこなうとなるとやはり気になるのが税金です。どのような税金がかかるのか把握していなければ、安定的に経営がおこなえるかの予測もできません。
本記事では、コインパーキング経営にかかる税金や可能な税金対策、コインパーキング経営のメリットについて解説します。
目次
安定的にコインパーキング経営をおこないたいのであれば、経営にかかる税金を把握しておくことが重要です。まずは、コインパーキング経営にかかる税金を解説します。
固定資産税とは、固定資産とされる土地や建物の所有者にかかる税金です。納める場所は、固定資産のある市町村となります。納付時期はその地域によって異なりますが、一般的に4月・7月・12月・翌年2月の年4回に分けて納付するか、一括で納付します。税額は以下のように算出されます。
固定資産税の税額 = 課税標準額 × 1.4%(標準税率)
標準税率は1.4%ですが、自治体によって異なる税率を適用する場合があります。
都市計画税とは、都市計画事業や土地区画事業の費用に充てることを目的として、市街化区域内にある土地および建物の所有者にかかる税金です。市街化区域とは、都市計画法で指定される「都市計画区域」のひとつであり、「すでに市街地を形成している区域」と「おおむね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域」を指します。納める場所は、固定資産税と同様に該当する資産の所在する市町村です。
都市計画税を課税するかどうかは、それぞれの地域における都市計画事業等に応じて、市町村の自主的な判断にゆだねられているため、市区町村によっては課税されないこともあります。税額は以下のように算出されます。
都市計画税の税額 = 課税標準額 × 税率(自治体ごとに条例で定められた数値)
消費税は、商品の販売やサービスの提供などの取引に対してかかる税金で、消費者が負担し事業者が納付をします。ただ、コインパーキング経営の賃料収入には、消費税がかかるケースとかからないケースがあります。
土地所有者が自ら土地を整備してコインパーキングとして貸し出す場合は、利用料に消費税が課税されます。しかし、土地所有者が駐車場運営会社に更地の状態で土地を貸し、運営会社が土地の整備をおこなってコインパーキングの運営・管理をおこなう場合は、土地の賃料に消費税は課税されません。「管理をだれがおこなっているのか」によって、消費税がかかるか、かからないかが異なるということです。
所得税は、個人の所得に対してかかる税金です。コインパーキング経営で所得を得た場合、所得税の課税対象となります。1月1日から12月31日までの1年間の収入から必要経費を差し引き、所得控除後の課税所得に対して、税率を乗じて税額を算出します。税額は以下のように算出されます。
所得税の税額 = (所得 ー 控除額) × 税率
税率は、所得が増えることによって税率も上がる「累進課税制度」が採用されているため、所得の合計金額によって異なります。
償却資産税とは、経営で使う設備に対してかかる税金です。具体的には、コインパーキングに設置している料金の収受機や車止めなどの機器、フェンスや街灯などが対象です。償却資産税は固定資産税の一種で、課税標準額が150万円以上の場合に課税されます。そのため150万円に満たない場合は課税されません。税額は以下のように算出されます。
償却資産税の税額 = 課税標準額 × 1.4%
個人事業税とは、個人事業主の所得・収入に応じて課せられる地方税のことです。個人で事業を行う際、さまざまな行政サービスを利用していることから、その経費の一部を負担するための税金です。個人事業税の税額は以下のように算出されます。
個人事業税の税額 =(所得 ー 控除額) × 税率(自治体ごとに定められた数値)
法人税とは、法人の事業活動で得た法人の所得に対して課される国税です。法人には、株式会社や有限会社などさまざまな形態がありますが、法人税を課される法人は、株式会社や有限会社、合同会社などの普通法人の他、協同組合、一般社団法人などが挙げられますが、税率は法人の種類と規模により異なります。税額は以下のように算出されます。
法人税額 = 課税所得 × 税率 - 税額控除額
コインパーキング経営では多くの税金がかかりますが、できる限り税金の金額を減らして経営をおこないたいものです。ただ、これらの税金は対策を講じることで節税をおこなうことが可能です。ここからは可能な税金対策について解説します。
コインパーキングを住宅用地と一体化させることで、特例の適用を受けられる可能性があります。住宅用地は、自宅やアパートの敷地、またはその敷地と一体利用となる庭や駐車場なども含まれます。それらの住宅用地とコインパーキングを一体利用させることで駐車場は住宅用地と判断され、住宅用地の特例適用となり、固定資産税の軽減につながります。ただし、駐車場の面積と建物のバランスが重要なため、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。
前述しているように、償却資産税は駐車場経営で使う設備に対してかかる税金で、課税標準額が150万円以上の場合にかかります。課税標準額が150万円に満たない場合は課税されないため、税金対策をしたい場合は設備費用を150万円未満に抑えるようにしましょう。
広い土地でコインパーキングをする場合は、その分ロック板やフェンスなどの設備も多くなるため、150万円を超える可能性が高いです。そのような場合は、1つの敷地で駐車場の種類を分ける工夫をおこなってみましょう。例えば、土地の半分をコインパーキングに、残りの半分を月極駐車場にすれば、設備に使う費用を抑えることが可能です。
青色申告特別控除とは、青色申告で所得税の確定申告をおこなう個人事業主が、課税所得額から一定額を差し引ける制度です。個人事業主には売上から必要経費を差し引いた所得金額に税金が課されます。しかし、一定の条件を満たしていることで青色申告特別控除が適用され、最大65万円の控除が受けられます。最大65万円の控除を受けるためには、以下の条件を全て満たす必要があります。
- 不動産所得または事業所得を得られる事業を営んでいる
- 所得に関する取引を正規の帳簿(複式簿記)により記帳している
- 記帳に基づいて作成した貸借対照表と損益計算書を確定申告書に添付し、青色申告特別控除の適用を受ける金額を記載して、期限までに確定申告書を提出する
- 所得税の確定申告書、貸借対照表、損益計算書等の提出を、確定申告書の提出期限までにe-Tax(国税電子申告・納税システム)を使用しておこなう
※引用:青色申告特別控除|国税庁
コインパーキング経営に関しても事業的規模と見なされるため、これらの条件を満たしていれば青色申告特別控除が適用され、所得税が軽減されます。
コインパーキング経営は、近年では人気のある土地活用方法となっています。さまざまな土地活用方法のなかでも、コインパーキング経営には豊富なメリットがあるためです。ここからは、メリットについて解説します。
コインパーキング経営は、初期費用が少なく始められます。コインパーキング経営には、管理を任せる範囲によって経営方式がそれぞれ3種類あります。
一括借り上げ方式を選べば、管理業者が初期費用を負担する場合が多いため、非常に少ない初期費用でコインパーキングの経営をおこなうことができます。土地の所有者は土地を貸し出すだけで、管理は運営会社がすべておこなってくれるので、経営リスクが少なく始めることができます。
コインパーキング経営は、自動車1台分のスペースがあれば運用可能です。そのため、狭小地や変形地であっても経営をスタートできます。あまりにも土地が小さいという場合でもバイク置き場として貸し出すことができる場合がありますし、すでに何か土地活用をしている場合でも空いたスペースを利用してコインパーキングを作ることもできます。所有している土地を最大限活用することができ、収益化につながります。
コインパーキング経営は、「別の土地活用をしたい」と思ったとき、別の用途に活用しやすいメリットもあります。コインパーキングに関する設備とアスファルトを撤去すれば、すぐに更地になり、別の事業を始められます。そのため、「次の計画が決まるまでの間だけ」といった短期間での運用もおこなうことができ、暫定的にコインパーキング経営をすることも可能ということです。
本記事では、コインパーキング経営にかかる税金や可能な税金対策、コインパーキング経営のメリットについて解説しました。コインパーキング経営にはさまざまな税金がかかりますが、安定的に経営をおこないたいのであれば、その税金をきちんと把握して対策をすることが重要です。コインパーキング経営は経営リスクが低く始められるため、きちんと税金の対策をおこなっていれば、しっかりと収益につなげられるでしょう。経営にかかる税金や可能な税金対策を理解し、自身のコインパーキング経営を成功させましょう。