内部不正による情報漏えいとは?企業が知っておくべき原因・防止策を解説!

情報漏えいと聞くと、外部からのサイバー攻撃やマルウェアによる被害を思い浮かべる方が多いでしょう。しかし、実際には内部関係者による不正行為、いわゆる「内部不正」が原因となるケースも少なくありません。

たとえ高度なセキュリティ対策を施していても、内部からの情報持ち出しや不適切な取り扱いによって、顧客情報や営業機密などの重要なデータが外部に漏れてしまうリスクは常に存在しています。

本記事では、内部不正による情報漏えいの概要から、企業に与える具体的な影響、発生の原因、そして未然に防ぐための実践的な対策までを徹底的に解説します。

「人」によるリスクをどう最小限に抑えるか、企業としてできる備えを、今一度見直してみましょう。

内部不正による情報漏えいとは

「内部不正による情報漏えい」とは、従業員や元従業員、派遣社員、委託業者など、企業内部にアクセス権を持つ関係者が、不正な手段で機密情報を外部に持ち出したり、不適切に扱ったりすることで発生する情報漏えいを指します。

サイバー攻撃や外部ハッキングといった“外部脅威”とは異なり、内部不正は組織内の人間による意図的・または過失による行為が原因です。例えば、以下のようなケースが該当します。

  • 退職後の転職先に営業機密を持ち出す
  • 顧客情報を第三者に売却する
  • 業務用データを私物のUSBやクラウドにコピーする
  • 誤送信による情報漏えい(故意ではないが管理が不適切)

こうした行為は、企業の信用を大きく損ない、法的責任や金銭的損害にも直結する深刻なリスクとなります。特に、個人情報保護法や不正競争防止法といった法律に違反する可能性もあり、対応を誤れば企業の存続すら揺るがしかねません。

内部不正による情報漏えいは、「人」によるリスクであるがゆえに発見や対策が難しく、また完全にゼロにすることが難しいという厄介な特徴を持っています。だからこそ、未然に防ぐための仕組みづくりや、万が一に備えたルール整備が欠かせません。

内部不正による情報漏えいが企業にもたらす影響

内部不正によって発生した情報漏えいは、単なる社内の問題にとどまらず、企業全体の存続や経営に重大な影響を及ぼします。漏えいの規模や内容によっては、社会的信用の失墜にとどまらず、法的責任や多額の損害賠償が発生するケースもあります。

  • 社会的信用の失墜
  • 顧客からの訴訟リスク・損害賠償
  • 金銭的損失と対応コスト
  • 法的責任

ここでは、内部不正による情報漏えいがもたらす代表的なリスクを見ていきましょう。

社会的信用の失墜

顧客情報や機密データの漏えいが報道されると、企業のブランドイメージは一気に失墜しかねません。たとえ迅速に対応したとしても、消費者や取引先の信頼を取り戻すには長い時間と多大な労力がかかります。特に一般消費者を相手にするBtoC企業では、1度の情報漏えいが長期的な売上低下や契約解除といった事態につながる恐れもあります。

顧客からの訴訟リスク・損害賠償

漏えいした情報に個人情報や取引データが含まれていた場合、顧客や取引先から損害賠償請求や訴訟に発展するリスクもあります。実際に、漏えい被害者が集団訴訟を起こす事例も増えており、企業にとっては想定外の法的コストが発生する可能性があります。

金銭的損失と対応コスト

情報漏えい後には、社内調査、弁護士対応、謝罪対応、顧客への補償、再発防止策の導入など、膨大なコストがかかります。特に大規模な漏えいの場合、億単位の対応費用が発生することも珍しくありません。さらに、営業活動の停止や業務の遅延による間接的な損失も無視できない大きなリスクとなります。

法的責任

個人情報保護法やマイナンバー法、不正競争防止法などに違反した場合、行政指導や刑事罰の対象になる可能性があります。行政からの勧告や命令を受けると、企業としての社会的信頼がさらに失われるだけでなく、株価の下落や株主からの追及といった連鎖的なリスクにもつながります。法令遵守の観点からも、内部不正対策は避けて通れません。

内部不正が起こる主な原因

内部不正による情報漏えいは、単に個人のモラルの問題として片付けられるものではありません。多くの場合、組織の管理体制や風土に潜む「見逃されやすい弱点」が引き金となって、従業員の不正行為やミスを誘発しています。

  • 職場環境・人間関係の悪化
  • 情報管理体制の甘さ
  • 権限管理やアクセス制御の不備
  • セキュリティ教育の不足

ここでは、企業が特に注意すべき内部不正の主な原因を解説します。

職場環境・人間関係の悪化

社内の人間関係が悪化したり、不公平な評価やパワハラなどが蔓延していたりすると、従業員が不満や反感を募らせ、組織に対する忠誠心が低下します。その結果、「報復的に情報を持ち出す」「会社に損害を与えたい」といった動機的な不正行為が発生しやすくなります。健全な職場環境の維持は、不正の抑止にも直結する重要な要素です。

情報管理体制の甘さ

情報資産の保管・取扱いに対する社内ルールが曖昧だったり、明文化されていなかったりすると、従業員は「どこまでがOKなのか」の線引きを誤ってしまいます。

例えば、社外への資料持ち出しが黙認されていたり、共有サーバーに誰でもアクセスできる状態が放置されていたりする場合、不正の意図がなくてもルール違反が常態化しやすくなり、やがて深刻な漏えいにつながる可能性があります。

権限管理やアクセス制御の不備

業務に不必要な範囲までアクセス権が与えられていたり、退職者のアカウントがそのまま残っていたりする場合、不正のリスクは飛躍的に高まります。

特に中小企業では、業務効率を優先するあまり、「誰でも見られる」「一括でアクセスできる」ような環境が放置されているケースも少なくありません。また、アクセスログが取得されていなければ、万一の際に原因の特定が困難になり、責任の所在も曖昧になります。

セキュリティ教育の不足

内部不正は、悪意のある犯行だけでなく、「うっかり」「知らずに」起きてしまうケースも多数あります。例えば、私物のUSBメモリに社内データをコピーして持ち帰った結果、ウイルスに感染したり、紛失して情報が漏えいしたりするケースなどが該当します。

これらは、情報セキュリティの基本知識やリスク感覚が欠如していることが原因です。新入社員だけでなく、全社員を対象にした定期的なセキュリティ研修の実施や、身近な事例を交えた教育が、未然防止につながります。

企業が取るべき内部不正対策

内部不正は、完全にゼロにすることは難しいものの、事前の仕組みづくりとリスク管理によって、その発生確率と被害規模を大幅に抑えることが可能です。企業が持つ情報資産を守るためには、技術的な対策だけでなく、組織的・人的な観点も含めた多層的な対策が不可欠です。

  • アクセス権限とログの厳格な管理
  • 内部通報制度(ホットライン)の整備
  • 従業員へのセキュリティ教育の強化
  • 定期的なセキュリティ監査とリスクチェック
  • 退職者・外部委託者に対する情報管理対応

ここでは、特に優先すべき対策を順に解説します。

アクセス権限とログの厳格な管理

社内の情報資産に対するアクセスは、「業務に必要な人だけに、必要な範囲で」付与するのが基本です。例えば、部署や職種ごとに閲覧・編集の範囲を制限し、権限の最小化を徹底することで、情報の不正取得リスクを大きく減らすことができます。

また、誰が・いつ・どのファイルにアクセスしたかという操作履歴(ログ)を記録・監視する仕組みも欠かせません。ログを定期的に確認することで、不審な動きに早期に気づき、未然に対処することが可能になります。

さらに、退職者や異動者の権限が放置されるケースも多いため、アカウントの定期的な見直し・棚卸しも重要なプロセスです。こうした基本的な管理体制の整備が、内部不正を抑止する第一歩となります。

内部通報制度(ホットライン)の整備

内部不正は、当事者以外の従業員が兆候に気づいているケースも少なくありません。そうした気づきを活かすためには、従業員が不正の疑いや不安を安心して報告できる窓口の整備が非常に重要な存在と異なります。それが「内部通報制度(ホットライン)」です。内部通報は、最も早く、最も現場に近いリスク検知手段とも言われます。

この制度を機能させるには、以下の点が特に重要です。

  • 匿名での通報が可能であること
  • 報復禁止(通報者の保護)を徹底すること
  • 通報後の対応方針や結果を適切にフィードバックすること

制度が形骸化していたり、「通報しても無駄」と思われていたりすると、情報は組織内に埋もれてしまいます。信頼されるホットラインの運用には、社内周知と管理部門の迅速・公正な対応が欠かせません。

従業員へのセキュリティ教育の強化

どれだけ堅牢なシステムやルールを整備していても、最終的に情報を扱うのは「人」です。そのため、従業員一人ひとりがセキュリティリスクに対する正しい理解と自覚を持つことが、内部不正の抑止力となります。

教育のポイントとしては、単なる座学ではなく、実際に起こりうる事例や自社の業務に即したリスクを盛り込むことで、実感を伴った学びにつながります。また、新入社員研修での導入に加え、全社員を対象とした定期的なリフレッシュ研修も重要です。

加えて、情報を持ち出すリスクやSNS投稿の影響、個人情報保護に関する基本知識など、“日常業務に潜むリスク”を中心に伝えることが、現場レベルでの意識向上につながります。

定期的なセキュリティ監査とリスクチェック

内部不正は、「油断」や「慣れ」から生まれやすいため、定期的に社内のセキュリティ体制を見直すことも重要です。アクセスログの確認や権限の見直し、ルール運用の実態調査などを通じて、潜在的なリスクを洗い出すことが可能です。

監査は、IT部門やセキュリティ担当者だけでなく、第三者によるチェック(外部監査)を組み合わせることで、客観性や公平性が担保されます。また、「ルールはあるが現場で守られていない」「形式だけの対策が実態に合っていない」といった問題点にも気づくきっかけとなるでしょう。

監査結果をもとに、改善点を明確化し、実行可能な再発防止策に落とし込むサイクルを構築することが、継続的なリスク低減につながります。

退職者・外部委託者に対する情報管理対応

内部不正の中でも特に多いのが、「退職者」や「外部委託先」からの情報漏えいです。これらの関係者は、一時的に社内情報へアクセスする立場にあったため、不正の温床になりやすいという特徴があります。

退職者については、退職手続きと同時にアカウントの削除・権限の剥奪・端末の回収を確実に行いましょう。また、退職後に業務データを私的に保有し続けないよう、誓約書や機密保持契約を事前に交わしておくことも効果的です。

外部委託者に対しては、契約時に情報管理ルールや違反時の責任範囲を明文化し、監督責任を明確にすることが重要です。また、委託先の作業環境やセキュリティ体制についても、定期的にチェックを行うのが良いでしょう。

自社の社員ではないからこそ、情報へのアクセス範囲や保管方法を具体的にルール化し、実行可能な管理策に落とし込むことが求められます。

まとめ|内部不正はゼロにはできなくともリスクを減らすことは可能

内部不正による情報漏えいは、どの企業にも起こりうるリスクです。従業員や委託先といった「内部の人間」から情報が漏れるという特性上、完全に防ぎきることは難しいものの、仕組みや教育を通じてそのリスクを最小限に抑えることは可能です。

重要なのは、アクセス管理やログの可視化、内部通報制度の整備など、人・組織・システムの3方向からアプローチすること。さらに、セキュリティ教育や監査を定期的に実施し、従業員一人ひとりがリスク意識を持てる環境を作ることが、長期的な安全性の確保につながります。

また、こうした対策を実効性のある形で導入するには、ITとセキュリティの知見を持つ信頼できるパートナーの支援も欠かせません。

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内部不正リスクへの備えを強化したい企業様は、ぜひアジアネットにご相談ください。

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