通信が止まった瞬間、事業も止まる。災害時に企業が直面する本当のリスク

近年、地震や台風、豪雨などの自然災害が頻発する中、企業にとって「災害時の通信手段確保」は生命線となっています。実際に、2011年の東日本大震災や2018年の北海道胆振東部地震では、広範囲で通信インフラが遮断され、多くの企業が従業員の安否確認や事業継続に深刻な支障をきたしました。

インターネットが使えなくなると、クラウドサービスへのアクセスができない、取引先との連絡が取れない、社内システムの停止など、企業活動のあらゆる側面に影響が及びます。特に中小企業では、一度の通信遮断が事業存続の危機に直結するケースも少なくありません。

本記事では、災害時にインターネットが使えなくなる原因から、企業が準備すべき代替通信手段、そして今すぐ実践できる具体的な対策まで詳しく解説します。

災害時にインターネットが使えなくなる主な原因

災害時にインターネットが使えなくなる原因は多岐にわたり、その影響は長期間続く可能性があります。企業が適切な対策を講じるためには、まず「なぜ通信が途絶えるのか」を正しく理解することが重要です。

  • 通信設備の物理的損傷
  • 停電による通信機器の停止
  • 通信回線のアクセス集中

ここでは、災害時に通信インフラが機能しなくなる3つの主要な原因について、具体的な被害例とそのメカニズムを詳しく解説していきます。

通信設備の物理的損傷

地震による建物倒壊や地盤変動は、地中に埋設された光ファイバーケーブルや通信用の配管を断裂させ、広範囲でインターネット接続を不可能にします。

また、津波や洪水による浸水は、基地局や通信機器を物理的に破壊し、復旧までに数週間から数ヶ月を要するケースも少なくありません。特に、沿岸部や河川付近に設置された通信設備は水害の影響を受けやすく、通信設備が浸水被害により長期間使用不能となることもあります。

さらに、強風による電柱の倒壊や土砂崩れによる通信ケーブルの切断なども、通信遮断の主要因となります。

停電による通信機器の停止

大規模災害時の停電は、企業内のルーターやスイッチ、サーバーといったネットワーク機器を一斉に停止させ、たとえ外部の通信回線が生きていても社内システムにアクセスできない状況を引き起こします。モバイル通信の基地局も例外ではなく、バックアップ電源が尽きると携帯電話やスマートフォンでの通信も不可能になります。

実際に、2018年の北海道胆振東部地震では、全域停電(ブラックアウト)により携帯電話の基地局が順次停止し、通信が完全に途絶える地域が発生しました。企業の自家発電設備や無停電電源装置(UPS)も、燃料切れやバッテリー容量の限界により、長期間の停電には対応できないケースが多いのが現状です。

参照:平成30年北海道胆振東部地震・ブラックアウト – における通信・放送の被害状況とその対応

通信回線のアクセス集中

災害発生直後は、安否確認や情報収集のために一斉に通信が集中し、通信回線がパンク状態になる「輻輳(ふくそう)」が発生します。携帯電話会社は音声通話を優先的に規制するため、電話がつながりにくくなる一方で、メールやインターネット通信は比較的つながりやすい特性があります。

しかし、SNSへのアクセスや動画視聴なども集中するため、データ通信速度が著しく低下し、業務に必要なクラウドサービスへの接続が困難になることも少なくありません。特に、都市部では利用者が密集しているため輻輳の影響が大きく、災害発生から数時間は通常の通信環境が期待できない状況が続きます。

インターネット不通時に企業が直面する深刻な問題

災害時にインターネットが使えなくなると、企業は想像以上に深刻な影響を受けます。現代の企業活動は通信インフラに大きく依存しており、その遮断は単なる不便さを超えて、事業存続に関わる重大なリスクとなりえます。

  • 従業員の安否確認ができない
  • 事業継続が困難になる
  • 情報発信・収集ができない

ここでは、通信遮断が企業にもたらす3つの深刻な問題について、具体的な影響と企業が陥る危機的状況を詳しく見ていきましょう。

従業員の安否確認ができない

インターネットが使えなくなると、企業が最優先で行うべき従業員の安否確認が著しく困難になります。

メールやビジネスチャットツールが機能せず、緊急連絡網も電話の輻輳により機能しない状況では、誰がどこで無事なのか、負傷者はいないのかといった基本情報すら把握できません。特に、在宅勤務や外回り営業の従業員が多い企業では、所在地の確認自体が困難になり、救援活動の初動が大幅に遅れるリスクがあります。

また、従業員の家族からの問い合わせに対応できないことで、社会的信用を失う可能性も懸念されます。迅速な安否確認ができないことは、二次災害の防止や適切な支援の遅れにもつながり、企業の危機管理能力が問われる重大な問題となるでしょう。

事業継続が困難になる

現代の企業業務はクラウドサービスへの依存度が非常に高く、インターネットが使えなければ顧客管理システム、会計ソフト、受発注システムなど、事業運営に不可欠なツールに一切アクセスできなくなります。取引先や顧客との連絡手段も失われるため、納期の調整、在庫確認、緊急対応といった重要な業務が完全に停止してしまうでしょう。

特に、ECサイト運営企業やオンラインサービス提供企業では、通信遮断が即座に売上ゼロの状況を引き起こし、顧客離れにもつながりかねません。また、金融機関や物流企業では、システム停止により決済処理や配送業務が滞り、社会的な影響も大きくなります。

こうした事業停止期間が長引けば、競合他社への顧客流出や企業の存続危機にまで発展する可能性があります。

情報発信・収集ができない

災害時には、刻一刻と変化する状況に応じた情報収集と適切な情報発信が企業の命運を分けますが、インターネットが使えないとこれらが一切不可能になります。気象情報、交通機関の運行状況、二次災害の危険性といった重要な情報を入手できず、従業員や顧客の安全確保に必要な判断ができなくなるでしょう。

また、自社の被災状況や営業再開の見通しを顧客や取引先に伝えられないことで、「あの会社は大丈夫なのか」という不安や誤解を招き、風評被害につながるリスクもあります。さらに、SNSでの情報発信ができないことで、顧客からの問い合わせに対応できず、企業イメージの低下や信頼喪失を招く可能性も懸念されます。

企業が今すぐ実践すべき災害時通信対策

災害時の通信遮断リスクを最小化するためには、平常時からの準備が不可欠です。「いざという時に何とかなる」という楽観的な考えは、企業の存続を脅かす危険な姿勢と言えるでしょう。

  • 複数の通信回線を確保する
  • 安否確認システムの導入
  • BCP(事業継続計画)に通信手段を明記
  • 非常用電源の確保

ここでは、中小企業でも無理なく実践できる4つの重要な通信対策について、具体的な導入方法と注意点を詳しく解説します。

複数の通信回線を確保する

災害時の通信手段確保で最も効果的なのが、異なる通信事業者の回線を複数契約する「冗長化」です。例えば、主回線をNTT東日本・西日本の光回線、副回線をKDDIやソフトバンクのモバイル回線にすることで、一方の通信網が被災しても他方で業務を継続できます。

また、「副回線サービス」は、通常時は主回線を使用し、障害時に自動で副回線に切り替わる仕組みで、月額数千円から導入可能です。固定回線とモバイル回線を併用することで、異なる通信インフラを活用でき、災害リスクを大幅に分散できます。

衛星インターネット(Starlinkなど)を重要拠点に配備すれば、地上インフラに一切依存しない最強の通信環境を構築できますが、初期費用が高額なため、まずは複数キャリアの併用から始めることをおすすめします。

安否確認システムの導入

従業員の安否確認を迅速かつ確実に行うためには、専用の安否確認システムの導入が効果的です。これらのシステムは、地震などの災害発生時に自動でメールやSMSを一斉送信し、従業員がスマートフォンから簡単に安否を報告できる仕組みを提供します。

管理者側では回答状況をリアルタイムで自動集計できるため、誰が未回答なのかを瞬時に把握し、優先的にフォローすべき従業員を特定できるでしょう。また、LINE WORKSやSlackなどのビジネスチャットツールを活用する方法もあり、普段から使い慣れたツールであれば災害時もスムーズに連絡が取れます。

重要なのは、システムを導入するだけでなく、定期的に訓練を実施して従業員が使い方に慣れておくことです。年に2〜3回の模擬訓練を行い、実際の災害時に確実に機能する体制を整備しましょう。

非常用電源の確保

災害時の停電対策として、非常用電源の確保は通信機器を稼働させ続けるための生命線となります。まず、ルーターやスイッチなどのネットワーク機器には、UPS(無停電電源装置)を接続し、瞬間的な停電や電圧変動から機器を保護するとともに、数時間程度の電力供給を確保しましょう。

さらに、長期間の停電に備えて、ガソリンやLPガスで稼働する発電機を準備することも効果的です。ただし、発電機は屋外での使用が前提となるため、燃料の備蓄場所や使用方法について事前に従業員に周知しておく必要があります。

また、従業員が個人のスマートフォンで連絡を取れるよう、大容量モバイルバッテリーを配布しておくことも簡単で効果的な対策です。電源確保の計画を立てる際は、どの機器を優先的に稼働させるかの判断基準も明確にし、限られた電力を最も重要な通信手段に集中できる体制を整えましょう。

まとめ|備えあれば憂いなし!災害時も事業を止めないために強固な通信体制を整えよう

災害時にインターネットが使えなくなると、企業は従業員の安否確認、事業継続、情報発信といったあらゆる面で深刻な影響を受けます。重要なのは、「いつ災害が起きてもおかしくない」という前提で平常時から準備を進めることです。

特に、通信インフラは企業活動の根幹を支える存在であり、その途絶は事業停止に直結します。今日からできる対策を一つずつ実践し、災害に負けない強固な通信体制を構築しましょう。

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