現代の企業業務は通信インフラに大きく依存しており、通信障害が発生すると、クラウドサービスへのアクセス不可、取引先との連絡断絶、受発注システムの停止など、事業継続に関わる重大なリスクに直面します。実際、2022年のKDDI大規模通信障害では、約3,900万人の利用者に影響が及び、多くの企業が業務停止や顧客対応の混乱に見舞われました。
特に中小企業では、一度の通信障害が売上や信用に直結するため、事前の備えが生命線となります。
本記事では、通信障害が企業に与える影響から、冗長化によるバックアップ体制の構築、障害発生時の具体的な対処法まで、企業が知るべき通信障害対策を詳しく解説します。
通信障害が企業に与える深刻な影響とは
通信障害が発生すると、企業は想像以上に深刻な影響を受けます。
まず、クラウド上で管理している顧客管理システムや会計ソフト、受発注システムなど、業務の中核を担うシステムに一切アクセスできなくなり、業務が完全に停止してしまいます。ECサイトや予約システムを運営している企業では、売上がゼロになるだけでなく、顧客からの問い合わせにも対応できず、信用低下や顧客離れのリスクに直面するでしょう。
また、リモートワーク環境が当たり前となった現代では、通信障害により従業員間の情報共有や意思決定が困難になり、組織全体の機能が麻痺してしまう事態も珍しくありません。
こうした影響は、障害が長期化するほど深刻化し、企業の存続にも関わる重大な問題となります。
通信障害の主な原因
通信障害は突然発生し、企業活動に大きな影響を及ぼしますが、その原因は多岐にわたります。適切な対策を講じるためには、まず「なぜ通信障害が起きるのか」を正しく理解することが重要です。
- 通信設備の故障・不具合
- 自然災害による物理的損傷
- サイバー攻撃
ここでは、企業が特に注意すべき3つの主要な原因について、具体的な事例とそのメカニズムを詳しく解説していきます。
通信設備の故障・不具合
通信障害の最も一般的な原因は、通信事業者が保有する基地局やルーター、スイッチといったネットワーク機器の故障や不具合です。これらの機器は24時間365日稼働し続けるため、経年劣化による突然の故障が発生するリスクが常に存在します。
また、ソフトウェアのアップデート時のバグや設定ミスも深刻な障害を引き起こす要因となります。
企業にとっては、こうした通信事業者側の問題に対して直接的な対策は困難なため、複数の通信手段を確保する冗長化が重要となるでしょう。
自然災害による物理的損傷
地震や台風、豪雨といった自然災害は、通信インフラに物理的な損傷を与え、広範囲かつ長期間の通信障害を引き起こします。地震による地盤変動や建物倒壊は、地中に埋設された光ファイバーケーブルを断線させ、広域での通信遮断を発生させるでしょう。
また、津波や洪水による浸水は、基地局や交換機などの通信設備を完全に破壊し、復旧までに数週間から数ヶ月を要するケースも珍しくありません。
特に日本は自然災害が多い国であるため、企業は災害時を想定した通信手段の確保が非常に重要です。衛星通信など、地上インフラに依存しない代替手段を準備しておくことが、事業継続の鍵となるでしょう。
サイバー攻撃
近年増加しているのが、サイバー攻撃による通信障害です。
ネットワーク機器への不正アクセスにより、設定が改ざんされたり、マルウェアが仕込まれたりすることで、通信障害が発生するケースもあります。特に、企業が使用するルーターやファイアウォールのセキュリティ対策が不十分な場合、攻撃者に侵入されるリスクが高まります。
さらに、ランサムウェア攻撃により社内ネットワークが暗号化され、業務システムへのアクセスが完全に遮断される事例も増加しているケースです。サイバー攻撃による通信障害は、企業側のセキュリティ対策により一定程度防ぐことが可能なため、定期的なセキュリティ診断と対策強化が求められます。
企業が実践すべき通信障害対策
通信障害のリスクを最小化するためには、事前の準備が何よりも重要です。障害が発生してから慌てて対策を講じても手遅れになるため、平常時から包括的な備えを整えておく必要があります。
- 通信回線の冗長化(複数キャリア契約)
- クラウドサービスの活用
- モバイルルーター・ポケットWi-Fiの準備
- BCP(事業継続計画)への組み込み
ここでは、中小企業でも無理なく実践できる4つの重要な通信障害対策について、具体的な導入方法と注意点を詳しく解説します。
通信回線の冗長化(複数キャリア契約)
通信障害対策として最も効果的なのが、異なる通信事業者の回線を複数契約する「冗長化」です。例えば、主回線をNTT東日本・西日本の光回線、副回線をKDDIやソフトバンクのモバイル回線にすることで、一方の通信網で障害が発生しても他方で業務を継続できます。
また、デュアルSIM対応のルーターを活用すれば、1台の機器で複数キャリアのSIMカードを管理し、障害時の切り替えをスムーズに行えるでしょう。
重要なのは、異なる通信インフラを持つ事業者を選ぶことです。同じ回線設備を共有している事業者同士では、一方が障害を起こすと他方も影響を受ける可能性があるため、事前に通信事業者の回線構成を確認することをおすすめします。
クラウドサービスの活用
自社でサーバーを保有している場合、そのサーバーがある拠点で通信障害が発生すると、全てのシステムが停止してしまいます。しかし、クラウドサービスであれば複数のデータセンターでデータが冗長化されているため、一箇所で障害が起きても他のリージョンから自動的にサービスの継続が可能です。
例えば、Amazon Web Services(AWS)やMicrosoft Azure、Google Cloudなどの大手クラウドサービスは、世界各地に分散したデータセンターを持ち、障害時の自動フェイルオーバー機能を備えています。また、これらのサービスは専門事業者による24時間365日の監視・保守が行われているため、企業側での運用負担を軽減できる点もメリットといえます。
モバイルルーター・ポケットWi-Fiの準備
固定回線が障害を起こした際のバックアップ手段として、モバイルルーターやポケットWi-Fiを準備しておくことも効果的な対策です。特に、主回線とは異なるキャリアのモバイルルーターを用意しておけば、主回線の障害時に即座に代替通信手段として利用できます。
月額3,000円〜5,000円程度で契約でき、普段は社員の外出時や出張時に活用し、緊急時にはオフィスのバックアップ回線として機能させることが可能です。また、テザリング機能を持つスマートフォンを従業員に配布しておく方法も有効です。
BCP(事業継続計画)への組み込み
通信障害対策をBCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)に明確に組み込むことで、障害発生時の混乱を最小限に抑えられます。具体的には、主要な通信手段が使えなくなった場合の代替手段の優先順位を定め、誰がどのように対応するのかを詳細にマニュアル化しましょう。
また、重要な取引先や顧客への連絡方法、代替連絡先の設定、SNSでの情報発信担当者の指定なども事前に決めておくと良いでしょう。
BCPは策定して終わりではなく、年に1回以上の見直しと実践的な訓練を実施し、実際の障害時に確実に機能する体制を維持することが企業の生存確率を高めます。
通信障害発生時の対処法
万全の事前対策を講じていても、通信障害が発生する可能性はゼロにはできません。重要なのは、障害発生時に冷静かつ迅速に対処し、被害を最小限に抑えることです。
- 障害状況の確認
- ネットワーク機器の再起動
- 代替通信手段への切り替え
- 顧客・取引先への情報発信
ここでは、通信障害が発生した際に企業が取るべき4つの具体的な対処手順について、優先順位とともに詳しく解説します。
障害状況の確認
通信障害が発生したと感じたら、まず状況を正確に把握することが最優先です。自社のネットワークだけの問題なのか、契約している通信事業者全体の大規模障害なのかを見極める必要があります。
まずは、通信事業者の公式ウェブサイトやX(旧Twitter)などの公式SNSアカウントで障害情報を確認しましょう。多くの通信事業者は、障害発生時にリアルタイムで状況や復旧見込み時間を公開しています。
自社のみの問題であれば社内のネットワーク機器やケーブルの不具合が考えられ、広範囲の障害であれば通信事業者側の復旧を待つか代替手段への切り替えが必要です。状況確認には、障害の影響を受けていない別の通信手段(モバイル回線など)を使用し、復旧までの目安を把握することで、その後の対応方針を適切に判断できるでしょう。
ネットワーク機器の再起動
通信事業者側に問題がなく、自社のネットワークのみが不調な場合は、ルーターやONU(光回線終端装置)といったネットワーク機器の再起動を試みましょう。
機器の一時的な不具合やメモリ不足が原因で通信が不安定になっているケースも多く、再起動により問題が解決することがあります。手順としては、まずルーターとONUの電源を完全にオフにし、10分から20分程度待機してから再度電源を入れましょう。この待機時間により、機器内部のキャッシュがクリアされ、通信事業者側のシステムとの再接続が正常に行われやすくなります。
また、セキュリティソフトやファイアウォールが誤って通信をブロックしていないかも確認が必要です。これらの基本的な対処で改善しない場合は、代替通信手段への切り替えを検討しましょう。
代替通信手段への切り替え
ネットワーク機器の再起動でも改善せず、通信事業者側の大規模障害と判明した場合は、速やかに代替通信手段へ切り替える必要があります。事前に準備していた副回線サービスがあれば、手動または自動で副回線に切り替えましょう。
モバイルルーターやポケットWi-Fiを準備している場合は、これらを起動して社内ネットワークに接続し、重要な業務システムへのアクセスを確保します。複数の従業員が同時に使用する場合は、接続台数に上限があることを考慮し、優先業務から順に割り当てましょう。
また、近隣のカフェやコワーキングスペースのフリーWi-Fiを活用する方法もありますが、セキュリティリスクを考慮し、機密情報の扱いには十分注意が必要です。
顧客・取引先への情報発信
通信障害が発生したら、顧客や取引先への迅速な情報発信が信用維持のために極めて重要です。障害により通常の連絡手段が使えない状況を放置すると、「あの会社は大丈夫なのか」という不安や誤解を招き、信用低下につながります。
まず、企業の公式SNSアカウント(X、Facebook、Instagramなど)を活用し、現在の状況と対応状況を発信しましょう。「現在、通信障害により電話・メールでの対応が困難な状態です。復旧次第、順次ご連絡いたします」といった簡潔な情報でも、顧客の不安を軽減できます。
また、ウェブサイトのトップページに障害情報を掲載し、代替の問い合わせ方法(別回線の電話番号、緊急用メールアドレスなど)を案内することも効果的です。重要な取引先には、代替の通信手段(個人の携帯電話、SMSなど)で直接連絡を取り、業務への影響と今後の対応を説明しましょう。
まとめ|通信障害に負けない!強固なネットワーク環境を構築しよう
通信障害は予測不可能で、いつ発生するか分かりません。しかし、通信回線の冗長化、クラウドサービスの活用、モバイルルーターの準備、BCPへの組み込みといった事前対策を講じることで、障害時の被害を大幅に軽減できます。
重要なのは、「自社は大丈夫だろう」という楽観ではなく、「いつ起きてもおかしくない」という前提で平常時から準備を進めることです。
情報通信インフラの構築を手がけるアジアネットでは、通信回線の冗長化設計、副回線サービスの導入支援、障害時の切り替えシステム構築など、企業の規模や業種に応じた包括的な通信障害対策を提供しています。
通信障害に負けない強固なネットワーク環境の構築をお考えの企業様は、ぜひアジアネットにご相談ください。