IT資産を守るASMとは?概要や導入メリットなどを包括的に解説!

デジタルトランスフォーメーション(DX)の加速に伴い、企業のIT資産は日々拡大・複雑化しています。そして、クラウドサービスの利用拡大やリモートワークの普及により、従来の境界型セキュリティだけでは十分な防御が難しい時代となりました。このような環境下で、企業の「攻撃対象領域」を継続的に把握・管理する「ASM(Attack Surface Management)」が注目を集めています。

本記事では、ASMの基本的な概要から、導入のメリット、具体的な活用方法まで、わかりやすく解説していきます。セキュリティ対策の強化をお考えの企業の方々は、ぜひ参考にしてみてください。

ASM(Attack Surface Management)とは

ASM(Attack Surface Management)は、組織が保有するIT資産全体における攻撃対象領域を可視化し、継続的に管理する一連のプロセスを指します。具体的には、インターネットに公開されているWebサイト、アプリケーション、サーバー、クラウドリソース、IoTデバイスなど、外部から到達可能なすべてのデジタル資産を特定・監視する取り組みです。

従来のセキュリティ管理では、把握しているIT資産に対して個別に対策を講じる方法が一般的でした。しかし、クラウドサービスの普及やデバイスの多様化により、組織が意識していないまたは企業が使用を許可していない「影のIT(シャドーIT)」が発生するケースが増加。そのため、組織全体の攻撃対象領域を包括的に把握し、リスクを評価・管理することが重要となっています。

ASMの特徴的な点は、単なる資産の棚卸しにとどまらず、発見された脆弱性の深刻度評価や、設定ミスの検出、不適切なアクセス権限の特定など、セキュリティリスクの分析まで行える点です。また、新たなIT資産が追加された際の自動検出や、定期的なスキャンによる継続的な監視により、組織の攻撃対象領域の変化をリアルタイムで把握することが可能です。

このように、ASMは組織のデジタル資産を総合的に管理し、サイバー攻撃に対する耐性を高めるための重要な戦略として位置づけられています。特に、デジタル化が進む現代において、ASMの導入は組織のセキュリティ体制を強化する上で不可欠な要素となりつつあります。

ASMが必要な理由

近年、企業のIT環境は急速に変化し続けています。クラウドサービスの活用、リモートワークの定着、IoTデバイスの普及により、従来の社内ネットワークの境界線が曖昧になり、攻撃者が狙うことのできる領域は著しく拡大しています。この変化に伴い、組織が把握していない、あるいは管理が行き届いていないIT資産が増加することで、新たなセキュリティリスクが生まれています。

特に注目すべき点は、シャドーITの問題です。部門ごとに独自のクラウドサービスを導入したり、開発者が一時的に立ち上げたテスト環境を放置したりすることで、情報システム部門が把握していない資産が日々生まれています。これらの管理されていない資産は、セキュリティパッチの適用漏れや設定ミスなどにより、サイバー攻撃の格好の侵入口となってしまいます。

さらに、サプライチェーンを通じたサイバー攻撃が増加していることも、ASMが必要とされる大きな理由です。取引先や協力会社とのシステム連携が増える中、自社のセキュリティ対策が十分であっても、連携先の脆弱性を経由した攻撃のリスクは確実に高まっています。ASMを導入することで、このような外部との接点におけるリスクも適切に評価・管理することが可能です。セキュリティインシデントの被害が深刻化し、その復旧にかかるコストが増大する中、予防的なセキュリティ対策としてのASMの重要性は、今後さらに高まっていくと考えられます。

2種類のASMツール

ASMツールには大きく分けて「検索エンジン型」と「オンアクセス型」の2種類が存在します。それぞれのツールには特徴的な仕組みと利点があり、組織の規模やセキュリティニーズに応じて適切な選択が求められます。以下では、各タイプのASMツールについて詳しく見ていきましょう。

検索エンジン型

検索エンジン型のASMツールは、インターネット上に公開されているIT資産を外部から探索・特定する方式を採用しています。このツールは、独自に構築された検索エンジンデータベースを活用し、組織に関連するIPアドレス、ドメイン、証明書情報などを網羅的に収集。収集された情報は自動的に分析され、脆弱性の有無や設定ミスの検出、使用している技術スタックの特定などが行われます。特に優れている点は、組織が把握していない資産(シャドーIT)の発見に強みを持つことです。また、定期的なスキャンにより、新たに追加されたIT資産や変更点を自動的に検出することができます。

オンアクセス型

オンアクセス型のASMツールは、組織内部のネットワークに配置され、実際のトラフィックを監視・分析する方式を採用しています。このツールは、組織の内部から外部へのアクセス、外部から内部へのアクセスを常時モニタリングすることで、実際に使用されているIT資産を正確に把握します。

リアルタイムの監視により、未承認のクラウドサービスの利用や、不適切なデータ送信、異常なアクセスパターンなどを即座に検出することが可能です。また、実際のトラフィックを基に分析を行うため、使用頻度や重要度の評価が容易であり、リスクの優先順位付けにも役立ちます。組織内の通信を詳細に可視化できる点は、コンプライアンス対応やインシデント調査においても大きな価値を持ちます。

ASMを導入するメリット

ASMを導入することで、組織は複数の面でセキュリティ態勢を強化することが可能です。

  • サイバーリスクの可視化と低減
  • インシデント対応の効率化
  • コンプライアンス対応の強化

特にここで解説する3つの観点において、具体的かつ測定可能な効果が期待できます。組織の規模や業態によって得られる効果は異なりますが、デジタル化が進む現代において、これらのメリットは経営課題の解決に直接的に貢献します。

サイバーリスクの可視化と低減

ASMの導入により、組織全体の攻撃対象領域を包括的に把握し、潜在的なセキュリティリスクを明確に特定することが可能になります。従来は見落とされがちだった設定ミスや脆弱性、不適切なアクセス権限などが自動的に検出され、対策の優先順位付けが容易になります。特に、クラウドサービスの利用が拡大する中で、意図せず公開されているデータや、セキュリティパッチが適用されていないシステムなどを早期に発見し、対処することが可能です。

インシデント対応の効率化

セキュリティインシデントが発生した際、ASMによって収集された詳細な資産情報は、迅速な原因特定と対応を可能にします。影響範囲の特定が容易になるため、必要最小限の遮断や修正作業に集中することができ、事業継続への影響を最小限に抑えることが可能です。また、インシデント発生以前からの資産状況の変化を追跡できるため、攻撃の侵入経路や手法の分析も効率的に行うことができます。これにより、再発防止策の策定も的確に行えるようになります。

コンプライアンス対応の強化

近年、セキュリティに関する法規制や業界標準への対応が重要性を増しています。ASMを導入することで、規制で求められる要件への適合状況を常時モニタリングし、必要な是正措置を迅速に実施することが可能です。特に、個人情報保護法やGDPRなどのデータプライバシー規制への対応において、データの所在や取り扱い状況を正確に把握できることは大きな利点となります。また、定期的な監査やセキュリティ評価の際にも、必要な情報を迅速に収集・提示することができ、コンプライアンス対応の工数を大幅に削減することができます。

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まとめ

本記事では、企業のIT資産を包括的に保護するASM(Attack Surface Management)について解説してきました。

デジタル化が進む現代において、ASMは組織の攻撃対象領域を可視化し、効果的なセキュリティ対策を実現する重要なツールとなっています。ASMの導入により、サイバーリスクの可視化と低減、インシデント対応の効率化、コンプライアンス対応の強化といった具体的なメリットが得られます。

セキュリティ対策の重要性が増す中、ASMは組織の防御力を高める有効な手段として、今後さらに注目を集めていくことでしょう。

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